外で絵を描きたいけど、どのように制作&構想をするのか?またはどんな持ち物が必要なのかなど、気になったりしますよね。
今回は、南米コロンビアの首都ボゴタ(Bogota)にある伝統的な街サンクリストバル(San Cristóbal)の丘を野外で油絵スケッチをしてきました。初心者にも参考になるような、持ち物や絵具、制作過程をお見せするので参考にして見て下さい。
「赤レンガ」づくしのサンクリストバルの丘
こちらは取材に行ってきた、サン・クリストバルの丘です。写真に見えるように赤レンガの家が沢山並んでいますよね。なぜだか分かるでしょうか?
これは実は伝統的なヨーロッパ形式の家で、スペインの影響で16世紀にヨーロッパの赤レンガ形式の家がたくさん作られるようになったんです。またボゴタ周辺、特にサン・クリストバルはこの赤レンガの家を作るため良質な粘土が取れる地域なのです。日本では見られない景観ですね。
ここコロンビアにはこのような絵になるようなダイナミックな景観が沢山あります。
首都のボゴタは 標高が2600mもありアンデス山脈によってつくられた起伏の激しい山づくしです。アンデス山脈は南米を南北に走っています。そして、ここはアンデス山脈の中に東コルディエラ(Cordillera Oriental)という地域の激しい起伏によりできている丘なんです。
実は今日はここに住んでいる知人の家にむかっています。この地域で野外スケッチに良い場所を探していて、ある知人の屋上を絵を描く場所として貸してくれることになりました。
ではこの丘を紹介していきますね。
急な坂に、激しい階段、そして丘の上からはダイナミックな景観が広がっています。油絵で風景画を描くにはまさに「穴場」です!丘の上からはここからはボゴタの街を一望できるのです。
このような急な坂や階段は昔、韓国に住んでいたころのソウルの解放村(해방촌)や梨泰院(이태원)を思い出させてくれます。
ちなみにCristóbalというのは3世紀の十四救難聖人の1人で、旅行者の守護聖人らしいです
このように階段もダイナミックです。平坦な都市の風景よりもこのような起伏の激しい街の方が絵になりますね。人生も平坦な人生より、紆余曲折の人生のが美しいではないでしょうか?
野外スケッチの場所を探す方法
風景画のための良い場所を探すテクニック
⓵知人を沢山作って場所を紹介してもらう
⓶たくさん歩く
野外で安心して絵を描くにはそれなりの「場所」が必要ですよね。特に南米は風景は魅力的なのですが、治安は良くないです。ですが、治安が悪いからと言って描きたい風景を描かないのは私のプライドが許しません。では描きたい場所を描くにはどうしたらいいでしょうか?それは積極的に「描ける場所を作る」ことです。私の場合はその地域に友人を作って、「屋上で描いていい?」なんて尋ねたりします。(大抵の場合オッケーしてくれます)。また屋上からの写真も見せてくれる?と聞くと写真も送ってくれます。 さらに、、、、その友人の紹介で別の友人の屋上を紹介してもらったり、、、、そうするとドンドンと描ける場所が増えていくのです。特にコロンビア(ラテンアメリカ)は気さくな人が多いので、多くの場合快くオッケーしてくれます。
日本人の感覚だと人の家にオジャマすると悪いな~みたいに思ったりしますよね。ですが、実際自分の家の周辺を絵に描いてくれたら喜ばれるものです。まして「なんとかいい絵を描いてやろう!」と思ってるわけですから、あちらとしても悪い気はしないものです。私は、、、私の描く絵がこの地域を芸術的にする!と思って描いています。
とうことで、知人の家の屋上にこれから上がっていきます。とても親切な方で、すでに「梯子」が準備されていました、、、!
この屋上からはサン・クリストバルの伝統的な家が立ち並んでいるのが見えます。日本ではなかなか見られない光景です。
⓵油彩制作過程/道具/描写ポイント
準備する道具
イーゼル/パレット/絵の具/木の板(紙キャンバスを貼る)など
ではこれから油絵道具を開いて準備していきます。なんと、、、、既に「椅子」が準備されていました。メチャメチャ親切です。ちなみに、、野外で描く時は持ち物をコンパクトにしないと重くて苦労します。水彩スケッチよりも油彩スケッチの方が道具が多く、難易度が上がるのは確かです。
●イーゼルについて
以前はプロの画家っぽく、4万円くらいで買ったイタリアのメーカーの「折り畳み式野外イーゼル」をつかっていましたが少し重かったんですね(笑)。結局現在は2000円のステンレスの超軽量野外イーゼルに落ち着きました。軽いからです。ですが、、、、韓国の海辺のように強風が強い場所ではある程度イーゼルが重くて三脚がしっかりしていないと海に吹き飛ばされます。
●パレットについて
パレットはパナマの画材屋で買った木製の薄くて軽いパレットを使っています。
●絵の具について
個人的にお勧めのメーカーはクサカベ(日本製)やマイメリ(Maimeri/ イタリアのメーカー)の色が綺麗だと思います。ダイソーで買うような絵の具はお勧めしません。ホルベインもいいと思います。絵の具セット(12色入り)みたいなものより、一番必要な色から揃えていくのがお勧めです。
野外スケッチのポイント
⓵とりあえず道具はコンパクトで軽い方がいい
⓶風が強い地域ではイーゼルの重さも重要
⓷Vogue誌に載るわけではないのでカッコつける必要はない
なんとコーヒーをくれたり、、、クリスマス前ということで、クリスマス期間限定コロンビアの伝統的なお菓子(紅茶プリンにレーズンが入っている)を下さいました。私がおじゃまさせてもらっているのにいいのでしょうか、、、、。
食べて元気もでて、これから制作に取り掛かっていきます。
●制作過程
⓵下地を作ります。これはテレピン油(Turpentine)で描きました。紫やバーントシェンナ、イエローオーカーを基調色にして感覚的に光を捉えます。
ちなみに、英語圏やスペイン語圏で画材屋で「テレピン」下さいと言っても伝わりません。発音は「ターペンタイン」と言わないと認識してくれません。
テレピンの使い方
すぐ乾く。下地の色を乗せる時、大きな明暗のバランスを整える時に使う
⓶全体的に家を描いていきます。この地域は家が古いので、古い家の感じを出すために描いていきます。全体的にシルエットとして描写したいので、あまり描きすぎないように気を付けます。
リンシードオイル(Linseed Oil)も使い始まます。絵の具の伸びと光沢感を画面に与えるためです。
⓷手前の見せたい部分を描写します。古くなった堅い木の質感、家の外壁に質感をパレットナイフで絵の具を厚く乗っけて手表現します。すこし色味も古い感じで。この質感表現は水彩画では難しいです。
⓸雲を描きます。空の明るい感じをだすには空の青を明るくするより、雲のハイライトを明るく描くのがポイントです。
⓶油彩制作過程/鳥を入れる
構想→クロッキー→油彩
南米は自然が豊かで沢山の鳥が住んでいます。
飛んでいる鳥ほどに風景を引き立ててくれる動物はいません。
絵画の技法も大切ですが、やはり主題がもっと大切です。
この地域の鳥を絵画に入れたかったので、コンロンビア人の知り合いにこの地域にはどんな鳥が住んでいるか教えてもらいました。そしたら鳥の写真のリストを送ってくれました(上写真)。沢山の鳥がいるのでビビりました。とくにこの地域にはスペイン語でCopetones(アカエリシト)やPicaflor(ハチドリ)という鳥が生息してるそうです。オウムとかキジとかいろいろいますが最終的にGavilan pechocanelaという鷹を絵に描くことにしました。
⓵Ipadで鷹をクロッキーします。まずは写真ではなく頭の中のイメージを優先にして、鳥が飛んでる様子をスケッチします。デッサンとクロッキーの違いはクロッキー(スケッチ)はより頭の中のイメージや構想を描きとめることです。鳥が飛んでいるように見えるために頭の中のイメージで鳥の形をデフォルメします。
⓶クロッキーを基に油絵で描写します。鷹は茶色ぽく色がついていますが、「白い鷹」のイメージに変えました。空を羽ばたいて飛んでいるように見せるために二羽で別々に羽根のポーズを変えます。背景とのコントラストを引き立てるために、背景の廃墟は暗くシルエットでみせて、鳥はバーンと明るく見せます。
⓷サインを書き入れます。下地の絵の具が乾いている上に書き入れないと、滲んで鮮明に描けません。
完成作品
●Cerro de San Cristobal/サンクリストバルの丘
OIl on canvas 14.2×21.7cm 2024
こちらが完成作品です。古びたサンクリストバルの丘を背景に鷹が丘を登るように飛んでいます。鷹は自由と解放と信念を意味しています。今回場所を提供してくれた知人が感銘を受けて下のようなコメントくれました。
[I feel something warm in my heart / In spanish : Me siento conmovida /日本語:何か心が動かされます」といってくれました、、、、。このように自分の住んでいる場所の景色を描いてくれると感謝されるものです。あなたもこの機会に外で絵を描きに行ってみませんか?
●よければコメントください