半抽象的な静物画を描く方法/油彩研究⓵

静物画 壺 靴

皆さん今日は。静物画を抽象的に描くとどのようなイメージになるのでしょうか?
具象と抽象のバランスをどうするかは絵画の永遠のテーマに思えます。
皆さんはどのように考えますか?
今回は半抽象の静物画を油絵で描くことに挑戦していきます。
こちらはは2018年頃に美術予備校で講師をしていた時に描いた作品です。
半抽象の醍醐味は、どれくらい描写して、どれくらい抽象的に描くか(描かないか)というせめぎあい、バトル(やり取り)を楽しめるところです。
一連の過程を見てみましょう。

目次

靴のある静物画・半抽象

静物画 下塗り

⓵まずは下塗りをします。
これはテレピン(turpentine)を使い大きく形と明暗捉えます。こちらのキャンバスは綿キャンバスなのでオイルを吸収しやすいです。なので麻キャンバス(通称・麻キャン)よりも絵の具が浸透していてボケているのが見えます。なんとなく大きなモチーフの輪郭と位置関係を把握します。
ウルトラマリン/クリムゾンレーキを使用しています。

静物画 抽象

②抽象的なアクションを入れる
ここから既に抽象的なアクションを入れます。モチーフが具象的なので抽象的なアクションをどこかでいれないと半抽象画に永遠となりません。感覚で色彩と形入れていきます。
ナイフも使いマチエールを少しデコボコ入れた部分もあります。
この時に色彩の流れ(=これが絵の印象の半分を決める)がある程度かっこよく見える必要があります。

静物画 抽象

⓷ナイフや筆でスクラッチを入れる
個人的にはゴツゴツしたタフなマチーールが好きなのでナイフなどでスクラッチを入れていきます。
ホワイト(主にチタニウムホワイト/titanium white)を使っています。

これはキャンバスの白とはちがい物質感のある白になります。物質感のある白と物質感の無い白とは何が違うでしょうか?つまり有る白と無い白ですね。哲学的に考えてみたいところです→
東洋では主に無い白=紙の余白の白を使い、西洋では主に有る白=絵具の白を使います。
油絵具の場合、白を使うと、その絵の具の白は他の色の絵の具と混ざります。

静物画 半抽象

④空間の描写をし始める
台の水平線を描いたり、少しずつモチーフのアウトラインを描き始めます。部分的に半抽象画にしていきます。描写をすると絵は細かいアクションが絵の具をお互いに混ぜ合わせるので色彩的にはグレーが増えていきます

静物画

⑤靴・瓶・ツボ・鉄パイプを描く
かなり具体的に描き始めました。半抽象的にしたいのであまり描写しすぎないようにします=大きな色彩の流れ(抽象的な形)を損なわないようにします、、というか結構すでに損なってしまったのですが(笑)
この加減が難しいですね。右側の壺をどれくらい描くかが悩みどころです。

静物画 壺 靴

⑥完成・ディテールを更に描きます
右側の壺を少し描かき、靴や、鉄パイプの描写(影など)の荒い部分を整理しました。背景右上のグレーの色面を無く背景から光が差し込んでくるように白く抜きました。右端の台の境界線も描き、背景とのコントラストを出すことで背景との距離感を表現しました。

完成をどこにするのか、筆をどこで置くのかは難しいところです。、この絵の場合、色彩はあまり計算せず、描写と明暗をどのバランスにするかに焦点を当てていました。なので色彩はよりグレートーンにしあがりました。抽象的な流れは少し残っていますが、、、やはり具体的になりすぎた感もあります(笑)

細部描写について

こちらはディテールです。何か抽象的な形で偶然できる形が面白いですね

描写具合に注目してみます。描いている部分と描いていない部分があります。、、、
これが絵画を面白くしますね。

静物画 油彩

背景ですが、絵の具がのっている部分とのっていない部分があるのがみえると思います。このようなマチエルの変化を作るのも面白いですね。

半抽象にするには絵画的な色彩の流れが重要

②、⓷の段階では半抽象的な色彩の流れがかなり見えたのですが、描写が入るとやはりおおくのそのような絵画的な部分が損なわれました。描写を犠牲にしても、⓶⓷の流れをもっと残しておくべきだった思います。

いかがでしょうか、この作品についての感想などあればコメント欄からお送りください。



静物画 壺 靴

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◆この記事を書いた人

Gemmaのアバター Gemma 源馬久崇ーLandscape Artistー

旅をしながら絵を描いている画家です。
「芸術は人生を豊かにする」ことを信じて活動しています。
大変な時代ですが共に頑張りましょう。

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