世の中には、「誰かに絵を描いてほしい!」と思っている人が必ずいます。
逆に考えてみると
皆さんも誰か好きな画家がいれば
自分の全盛期の、または人生を振り返った時の肖像画とか
自分の大切な家族の絵とか、
自分の生まれ育った思い出の場所とか、
「誰か描いてくれたらいいなぁ、、、」と
思うのではないでしょうか?
そのようなニーズがあるので、いつの時代も
「絵画の注文制作」というものが無くなったことはありませんでした。
中世も、ルネサンスも、印象派の時代も、現代も。
これは、お金を払うから描いてくれ〜!とか
お金をくれるなら描いてあげるよ!
という無味乾燥な関係ではなくて
依頼主と画家の信頼関係があるからこそ生まれる依頼(ビジネス)です。
依頼主は「あの信頼できる画家さんに、、」
画家は「あの人が言うから、、」
という、単にお金のためだけではなく
そこに関係性があってこ依頼が成立しますね。
絵だけにとどまらないドラマがそこにあります。
私はときどき絵画の注文制作を受けることがあるんですが、
私の場合はほとんど風景画です
今回は、どのように注文制作を受けるようになるのか?
経由や経緯、ストーリーをお伝えしたいと思います。
祖母へのプレゼント
依頼をいただいたのは浅草にある洋服屋さんからでした。
こちら依頼主である方の祖母さん(83歳になる)
が長年経営していたお店でしたが
ついにお店を畳むこととなり、
祖母の孫娘に当たる依頼主と依頼主の姉と
従兄弟2人が祖母へのプレゼントをしたいということで
思い出の詰まったお店をぜひ描いてほしい!とのことでした。
実はこの洋服屋、
依頼主の方の祖父が亡くなられてから
祖母が女一人で守ってきたお店で
依頼主の母も叔母もここで生まれ育ったそうです
「祖母が長年経営してきたこのお店をを畳んで貸すことは
かなりの決心だったと思う」と語ってくれました。
祖母が小さい頃は浅草の景気も良かったらしく、
お店の一帯はとても賑わっていて、
毎年、三社祭の時期には2階からお神興が見えたそうです。
でも、最近ではスカイツリーからのお客さんも見込めず、
昔からのお店が沢山お店を畳んでいるそうです。
「沢山思い出の詰まった絵を
是非あなたに描いて頂きたい」と依頼を受けました。
私はこの話を聞いて
そんなに大切なこのお店を、最後に私に描いて欲しい
と言われたことがとても嬉しかったです。
(絵を描くのは時間がかかるので決意が入りますが)
「絵で表現してほしい、、」
そうですね。やはり、
絵には思いや記憶を込めることができますよね。
ちなみに、「私は人に頼まれた絵を描くのは嫌だ、
自分の描いた絵しか売らない!」という画家の方もいますが
私は頼まれた絵を描くのは良いことだと思っています。
なぜなら、
ととえそれが本人は絵で表現することができなくても
それを代わりに表現してくれる「画家」がいることは
依頼主(誰か)にとってとても嬉しいことだからです。
どこから注文制作を受けるようになったのか?
この依頼を受けた経路は大学の友人の紹介でした。
彼の知人であった依頼主が誰かお店の絵を描いてくれる人を
探していたようで、私を紹介してくれました。
なぜなら私はいつも頑張って絵を描いていたので
友人の目には私が信頼できる画家として映ったのでしょう
彼は今、映画やドラマの客本を書いていて
アートの好きなオーラというか波長を放っていて、、
そういう人が自然と彼の近くに集まるんだと思います。
不思議です。
やはり意識をして活動していると、そういう人と知り合ったり
絵をビジネスにする機会がどんどん増えていくと思います。
絵を描いていくことで、自然とそのそうな波長が
石を湖に投げるて波紋ができるように広がっていき、、
人が人を呼び、関係性が広がっていきます。
つまり、人間関係は本当の財産だということですね。
お札は結局はただの紙切れで、インフレやデフレによって
価値が毎日変動しますが
価値や経済を生み出すのは結局「関係性」なので
アーティストが絵だけ描いて
人間関係を大切に思わないと
やはり、機会はなかなかめぐってくるとは思いません。(笑)
絵がめちゃめちゃ良い人は別ですが、、
でも画家も人との関係性があってこそ
人生に「味」が出ると思っています。
制作過程は、、?
まず①イメージスケッチをします(ここからは実際のスケッチと作品です)。
今回、依頼主の方が洋服屋の映っている浅草下町の写真を
何枚か送ってくれました。
お店の前を工事していたり、
マックが映っていたりするのでそれは省いてほしい!
とのことでした。「オッケー、問題ありません。」
次に②全体的な色の配置を考えます。
色の配置は下地に暖かい色を使うことに決めました(スケッチは完成イメージなのでグレーを結構使っている)。
後でグレー系の色で現実的な描写をするので、
下地も再度が低いと絵が冷たくなってしまうからです。
そして③キャンバスに油絵具で
下地の色を使ってラフにスケッチ(上)をします。
この時は感覚的に!
考えすぎると「マジで絵が楽しくなくなります(笑)」
さあ、、④中描きをします。(あ、、写真がありませんね笑)
想像してください、描写と立体感、奥行きを出していきます。
ここで、、一番大変だったのは、、、
「同じ絵を2枚描いてください!」
とのことでした。
え、、、、、
「2枚??」
「、、、、、、、、」
正直、これが一番きつかったです(笑
精神的にです、、、ほぼ一枚目の完成作を
もう一度模写する感じでしたね。
同じ絵を描くのは初めての経験でした。
上の写真は2枚描いている時の写真です。
⑤そしてフィニッシュです。
全体的な描写のバランスを調整します。
細部の細かい描写、手前の男性の描写、左奥の鳥居や色彩を足して
賑やかな感じを出すとかですね。
依頼主に絵を配達する
流石に2枚同じ絵を完成させるのはきつかったですが、
満足のいくものになりました。
あとは送るだけですが、その時は韓国にいたので
東京まで国際郵便(EMS)で送りました。
スポンジも入れてしっかり包装してですね。
依頼主の方はとても気に入ってくださって
「ありがとうございました!素晴らしい作品ですね。
祖母も大変気ににいってくれて、是非、、額に入れて飾りたいです!」と
すごく喜んでくれました。
描いた甲斐がありました。
誰かに絵で喜んでもらうのは絵を描いていてよかったと思う瞬間です。
過去のストーリーとしてもこうして誰かに伝えることもできますから。
依頼を受けるのは、大変だと思う時もありますが
自分の絵を発信し続け、色んな人の目に触れることで
依頼を受ける確率はドンドン上がってい来ます。
最近ではSNSが発達しているので、どのように情報
発信をするかが考えところですね。
ではまた次回お会いします。
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