こんにちは、GEMMA HISAです。
最近南米移住し、アンデス山脈を描いたりして
いるアーティストです。
突然ですが、知人の家にお邪魔し、
お茶を飲みながら「ずずっっ、、ああ外でつくばいが、カコーンッ」
壁を見ると、、「あ!!その山水画の掛け軸、なんか。。いいねっ!」
「どこで買ったの?」と思ったことはありませんか??
この「山水画」が好きな方は多いのではないでしょうか?
この記事を読んでいるあなたも山水画に興味があるので読んでくれていると思います。
では何故「山水画」はあなたを日本人を魅了
するのでしょうか?
これは東洋人にとってとても興味ぶかい議題だと思います
今回は美術作家の立場からその理由に迫ります。
もともと山水画の起源は中国の唐の時代(618ー907年)でした。
その当時中国のメインの絵画は人物画・花鳥画(花鳥虫などを描く)・山水画の3つでした。
でもこの東洋で山水画(風景画)が絵画のメイン主題になったことは西洋より
1000年早かったんです。
伝統的に西洋は主にキリスト教がメイン=聖書に登場するような人物画がメインでした。
特に西洋で風景画がメインになり得たのは写実主義のクールベさんあたりからです。
(Gustave Courbet /1819-1877/フランスの画家)
①東洋の宗教観は自然と人間の一体化
であるー山水画の精神は絵の中で遊ぶことー
ここでは東洋と西洋の宗教観の違いから、
なんで、、東洋で山水画が誕生したの?
を考察したいと思います。
実は西洋ではキリスト教が主流宗教ですが、
伝統的にはギリシャ・ローマの人本主義もミックさせれています
そこでは人間や自然を超越した神がいて、神と人間と自然はある面で分けて考えられてきました
これは「二分方的分類」と言ったりします。
要は善と悪、人間と自然、魂と肉体
いった具合に分けて考えることですね。
神様が人間を創り、人間が管理して愛するために自然も創造したという考え方です。
しかし、東洋ではちょっと違います。
キリスト教が広まる以前に東洋では
仏教や儒教などの精神文明がすでに浸透しており
道家には「道方自然」という考え方があって、
これは世の真理である道が自然との一体化だ
ということを説いてきました。
また「老荘思想」の教えでは自然の純理に従
おう!としてきたんですけど、
これは自然との合致を一番理想的な姿だと捉えたんですね。
そして仏教でも万物は相互依存していて人間と
自然を有機的な関係として考えていたんです。
つまり、、東洋では自然を超越した超越神はいなくて、自然と人間は共に生きないといけない内密な関係と捉えていたんです。
これが東洋では西洋よりも1000年早く山水画(山水画)が絵の主題になりえた要因でしょう。
また、山水画もただ見て描くんではなかったんですね。
山水を描くには山に登りぐるぐる見て周り、
川に行っては瞑想(実は寝たりとかしてたんじゃないかと思いますが笑)なんかをして、、
心に刻み込まれたイメージを画面に表す、
それが山水画を描くときの精神と考えられてきました。
ですから風景を見る視点ももっと自由であったということができます。「絵の中で遊ぶ」といった感じですね。
つまり、、
山水を描くことは「描きながら道を磨くこと」
「道を磨くために山水を描く」と考えられていたんです。
これは東洋の宗教観からきていると言えますし、
山水の近くで生活しながら自然とそのような思想が生まれてきた、とも見ることができます。
面白いですね
①山や川がない場合に価値がわかる
ー地政学的観点からー
山水画ですので絵の中に山と川(湖・海)が描かれまくっています。
でも、世界のどの場所でも山や川がいつも見えるのではありません。
むしろそんな場所はかなりレアです。
今私が住んでいるコロンビアの首都ボゴタでは山しか見えません。(笑)
アメリカ南部のテキサス(日本の面積の2倍ある)は広大な土地ですが全て平地です、、
日本や韓国のような山は、見えないぞ、ㅠㅠ;;
しかし、、、
「中国」には山と川が共に存在する場所が多いです。山地と丘陵と高原が国土の3分の2を占めています。
「韓国」でも(私は10年暮らしました)山とすぐ横に海が見える場所(釜山とか)がたくさんありました。ー地政学的に東高西低地域(동고서저지역)と言われていて、東に高い山脈がたくさんあり、西側はなだらかな地面が広がっていますー
昔ソウルを首都に決めたのは山水があり風水が良かったからだと言われています。
「日本」での山地は国土の75%を占めています。私の出身の長野県は山と川ばかりでした。
日本の山水画は独自の美しさがありますよね。
国によって山水のスタイルがやはり違いますね。
ところで古くから東洋3国というと中国・韓国・日本のことです。
この3国では文明の発達に伴って芸術文化が特に発達してもともとの地理的環境から山と川を描き始めたと見ることができます。
画家は特別なドラマチックな景色を描こうとしますので、、
平凡な景色はあまり描きません。
絵には特別(レアな瞬間)さが必要なのです。
これが山水画を描く2つめの理由であると思います。
③山水画は遠近法を絵にとり入れやすいー東洋の遠近法「三遠方」とは?ー
先ほど語ったように山水画を描くときは心に刻まれたイメージを絵で表現することが重要になってきます。
しかし、、
なんでも「フィ〜リング!芸術は爆発だ〜
自由最高!」というわけではなくて
古くから「三遠方」という絵になりやすい
遠近法が取り入れられてきました。
これは何かというと、、、
まず、西洋の遠近法は主に一点透視方(奥に行くほど線路が焦点に向かって小さくなるアレ)
という遠近法が使われていました。
ですが東洋はちょっと違って、、
三遠方を簡単にいうと、、、
①山の下から山を見上げる構図が一つ目
②山の上から下(川とか)を見下げる構図が
二つ目
③山の上から同じ高さの遠くの山を眺める構図
が三つ目、、のことです。
つまり山と川をどの視点で見つめるかが違います。この使い分けで、絵の印象が全く違うものに変わるわけです。
要は、ドラマチックに構図を変えるには山水画が持ってこいなわけです。
何故なら山や川といった具体的なモチーフを使うことができるからです。
しかもこの山や川は画家の心や旅の思い出を刻み込めるモチーフですから画家の魂を込めやすい
主題なんですね。
ここまで読んでいただけると
なぜ山水画が愛されているのか、
人々を魅了するのか?の
理解につながるのではないかと思います。
是非よければ、思い出に残る山や川をモチーフに
「山水画」を描いてみたらいかがでしょうか?
ではまた次回お会いします。
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