皆さんこんにちは。中米の楽園で有名なコスタリカという国があります。
私は2022年の秋頃そこに滞在していたのですが、コスタリカ人の知人のアパートに一時滞在させてもらったんです。その地域はSanta-Ana(サンタ・アナ) って言うんですけがとても綺麗な場所です。実はその知人の方の依頼で「サンタ・アナの景色」を描くことになりました。今日はその時のお話をしていきます。
サンタ・アナとは?
このサンタ・アナって聞くと、まさにザ・スペイン語という感じがしますよね。ここはコスタリカの首都サン・ノゼの西側にある落ち着いた街です。緩やかな山に囲まれていて、盆地のような感じでもあります。日本ではこのような景色は思い浮かびませんが、とにかく素敵な場所です。
サンタ・アナ=聖アンナという意味で、「サンタ」は女性の聖人の名前の前につくものです。アナとはアンナと同じ意味で、アンナは聖書に出てくる聖母マリアの母とされる女性です。
男性の聖人の場合はサンやサントという言葉がきます(サン・フランシスコ(San Francisco)サント・ドミンゴ(Santo Domingo)など)。
Santa-Ana(サンタ・アナ)の地図
首都サンホセの西側にある。
ここはなんというか高級住宅地と民家がミックスしている場所です。オシャレなカフェとかレストランがあります。 観光地のようなでもあります。人気の穴場です。
下にエイ・アイで作ったイメージ画像を張りました。かなり田舎っポサがでていますが、もっとアパートとか道路とかあります。 綺麗な山が後ろにあるんですよね、 で、その山に上には別荘というかコスタリカで最も眺めのよい場所があります。スタリカの標高は結構高くて約1170m ぐらいです。1年間を通してコロンビアのように温暖な気候でメチャメチャ過ごし易いです。昼は25度ぐらい、夜は涼しい時は15度ぐらいですね。この気候のおかげでコスタリカは「永遠の春の都市」って言われています。
AIの創ったサンタアナの景色(笑)
鶏が鳴いてそうですが、実際は鶏感はありません
準備は猫と犬と
ロビーに着くと、エントランスに綺麗な花がありました。これは、、、中米の花でしょうか?中南米は特有の生態系があって日本では見られない植物が沢山あるので、絵に描いたら面白そうですよね。
猫がお出迎えしてくれていました。
猫のトラ君(雄)
彼は相当手強いです。
いつもベランダを行き来しながら隣の家に無断で行ったり来たりしていました。(笑)
素敵なアパートにも驚きましたが、バルコニーから景色をみてさらに驚きました。背景にメチャカッコいい山が見えるからです。これはまさにコスタリカならではの風景です。この山は「Cerro de Santa Ana/セロ・デ・サンタアナ」という山です。セロ=丘という意味です(スペイン語)。この山はその地域の人のシンボルみたいな山で、その山をハイキングしたり、山の上からはサンタ・アナの景気が一望できるわけです。
こちらはアパートに掛かってあったなんとも不思議な絵画です。岡本太郎のようなイメージとコスタリカの植物が一緒に描かれています。こちらはオーダーメイドで、あるアーティストが描いた作品だそうです。
こちらがワーク・スぺイスになりました。ここの台の上にキャンバスを置いて制作を始めていきます。天井のラインが平行ではなく、日本の屋根のように傾いているのが心地いいですね。
ということで、まずは絵の具を揃えることになりました。旅先なので十分な絵具をもっていませんでしたし、たまに欲しい色がありません。下の写真はコスタリカのアートショップに絵の具を買いに行った時の写真です。こちらには日本ほど画材屋が沢山あるわけではありませんが、下の「ARTEA」というアートショップにはしっかり画材がそろっていました。日本で手に入るような絵の具のメーカーもかなり取り揃えられていました。 何でも手に入りますね。
さて次はキャンバスの大きさです。どこの壁に絵を描けたいのか?どんなテーマの風景を希望するのかなど話し合いながら、決めていきました。規格のサイズにはイメージに合うサイズがなかったので、結局オーダーメイドでキャンバスを制作することになりました。これは75㎝×150㎝です(80号M(海洋) sizaに近い)です。キャンバスが出来上がるまで風景の取材をします。
こちらが75㎝×150㎝の出来上がったキャンバスを回収してアパートに運んでいるところです。なんとジェッソ(下地の白)まで既に塗ってくれていました。とても綺麗な仕上がりで驚きました。
設置完了です。油絵で描くので、汚れないようにシートを敷きました。設置しているあいだクマ君という犬が興味深々でみていました。彼は黒いので、写真だと目がどこにあるのか分かりません(笑)
光の吸収率99%の塗料を塗ったようです。では、これから本格的に制作に入っていきます。
サンタ・アナの「精神」を掴む
あの山の上には面白いことになんと風力発電のための風車があるんですよね。これも絵の中に描きました。あの風車でエネルギーを生産してこの地域に供給してるんだそうです。そして山の手前には小さな丘が見えます。
こちらは少し道路を上り丘から見下ろした山のラインです。色々な角度から山のラインをみてイメージに一番合った山のラインを模索します。手前の丘には家が点在しています。コスタリカらしいですね。これらの記憶を重ね合わせながら私がみて感じたサンタ・アナの景色を構成します。
そして次にどんな時間帯の光を描くのか?です。漠然とここから見える山を描いて欲しいとのことだったので、光の印象を試行錯誤しました。夕焼けの景色にすることにしましたが、その理由は夕焼けになると光が右の山の地平線から出てくるように見えるからです。その光が山や雲や空を照らしてサンタ・アナの印象を照らしています。
サンタアナは夕焼けが綺麗で、毎日色の印象が違います。これには理由が合るんですが、科学的な話をすると、この地域は標高が高くて開けた場所が多いので夕日を遮るものが少ないんです。そしてこの地域の「山々」が、夕焼けの光を反射するので色々な印象の光をつくりだすんです。また、コスタリカは湿度が高くて雲が多いので、夕焼けの光が雲や空気の水分に反射して散乱します。それが、赤やオレンジ、ピンクの光や綺麗なグラデーションを作ります。これがここの夕焼けが綺麗な理由です。
近くには市場が合って、コロナ下ではありましたがとても活気がありました。
さらにいろいろ感じたことがありますが、大体の大枠の構想は決まってきました。
これを具体的にスケッチで表現します。
スケッチと下描き
こちらが当時のスケッチです。色々な構図を考え、これぞという構図を選び下描きに移します。
この段階が一番自由で楽しいですね。明暗もつけ、バランスを見ます。
猫のトラ君が上手く描けているかみてくれています。彼はおそらく巨匠でしょう。ミケランジェロが憑依しているかもしれません。
この段階では感覚的に鉛筆の線を動かしていきます。
ここまでが鉛筆でのスケッチです。鉛筆がいいのは線で描けることですね。
線で感覚を叩きつけていきます。
次に油彩でスケッチをしていきます。この瞬間がさらに面白いでしょう。白黒でこの時はスケッチしました。より白黒でデッサンの感覚と近づけていきます。
彼が遊んでくれと、妨害してきます(笑)
ここまで油彩での下描きが完成しました。これがあるとないとでは描きやすさが全く違います。なによりイメージの定着具合が全然違いますね。
彩色と仕上げ
ではここからが本格的な彩色です。夕焼けのイメージ、空の青さ、山の色味を、なにより「内面のイメージ」を重視して、描いていきます。絵を描くにはまずは猫を椅子からどけないといけません。彼は遊んで欲しいので、私がいる場所にいるのです。白黒のイメージに光が差し込んでくるように右側から、夕焼けのオレンジ、黄色から描いていきます。
夕暮れの光を描き、、雲の光を描き、、、次は空のグラデーションです。
正直、この空の青のグラデーションが一番難しかったです。イメージと合う色彩が出来なかったので、
は3回も描き直しました。黄色→オレンジ→紫→青→白→青と、、、、、、
大変苦労しましたが、思うような色に描くことができました。
下は中間段階でのディテールです。
また、この作品では山の影を紫色に描いてみました。実は太陽がが沈むとき、光が大気中を長く走ると、青い光は散乱してなくなり、赤やオレンジの光が強くなります。山の影の部分がこの光を受けると、赤みがかった光が混ざり合って、紫色に見えるんですね。
右から夕日が差し込んできます。
黄色を何度も重ねて夕日の明るさを出していきます。
雲は完全にオレンジベースに紫を混ぜて描写しました。
何故かというと、夕日で雲がオレンジやピンクになっていたのがとても印象的だったからです。
雲の形はサンタ・アナのイメージの風景にあわせてデフォルメしていきます。
休んでいると、犬(クマ君)が寄ってきて一緒に休んでいました。
余談ですがな中米コスタリカと南米コロンビアの風景にはいくつかの違いがあります。コスタリカは小さな国ですが、熱帯雨林気候で、火山、ビーチ、面白い動植物などがコンパクトに詰まっています。国立公園も多いです。一方、コロンビアは国土と自然が広大です(日本の3倍くらい)。アンデス山脈、多様な山岳地帯、アマゾン熱帯雨林、カリブ海、太平洋沿岸のビーチ、コーヒー農園がなどなど。つまり気候が多様です。では完成品をお見せします↓
完成作品
こちらが完成作品です。★Santa-Ana. San Jose. Costa Rica/ Oil on canvas 2022. 75x150cm.
構想から仕上げまで約一ヵ月かかりました。これくらいの大きさの作品(100号ぐらい)は大体一ヵ月かかります。この作品は彼のアパートに住み込みで描かせて頂き、購入してくださいました。
デイテールの説明をしていきますね。
こちらは夕日とそれを浴びながら浮かんでいる雲です。雲のラインの形をいい感じにするのに苦労しました。また空にどのどんな形の雲を散りばめるのか?余白(青空)とのバランスなどかなり試行錯誤しています。
そして「セロ・デ・サンタアナ」の山です。雲もよりも、、、こちらがメインでもありますが、、、
やはり雲と夕焼けがメインかも。奥には風車のある山、手前には夕日を浴びて黄緑に光る黄緑の丘があります。私は山のこの描写が気に入っています。
こちらは風車の描写です。ザ・風力発電です。
その背後の雲の水色は偶然できましたがとても綺麗にマッチしたので
このまま残しました。風車の背後は何か熱い、燃えるような空の印象にしたかったのです。
こちらは広い青空とそこに浮かぶ大きな雲です。雲はここで本当に見た見た大きな雲をイメージしています。空と山をも横断するような雲でした。そして背後には開けた空が広がっています。それを感じさせるために空の余白を大きく描きました。
こちらは私のサインとタイトルです。
ディスプレイは犬と猫と
絵が完成したので、ディスプレイをしていきます。クマ君とトラ君が見てくれてますね。
何故ここに風景が見えるのか?と思っているのでしょうか?(笑)
こちらはバニッシュを塗っているところです。これは仕上げ用ワニスで絵の具の表面を保護したり、油が飛んでしまった表面に再びツヤを出すことが出来ます。
はい、こちらが絵が掛かった壁です。空間と合っていい感じで雰囲気が出ました!
こちらの方が依頼をしてくださったコスタリカ人の知人です。実は彼は日本に住んでいたこともあって、日本語がとても上手です。部屋に沢山の日本の書籍が置いてありました。私の100倍、日本語の本を読んでいます。
中米の楽園と呼ばれたコスタリカで住み込みで制作をすることで、コスタリカの光や景色をリアルに感じることができました。大変貴重な思い出でになりました。
また次回お会いします。
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