現代のアートとなんだろうか? 現代・美術とはなんだろうか? 美術・アートというと一見難しく見えるが。これは大きく二つの流れに分類できるのだ。今回は2つの美術マーケットの流れから美術とは何かについて迫っていきたいと思う。
現代の美術の2つの市場 ー①メガギャラリー、美術館
文化を支える背景には経済システムが存在している。
つまり市場があり需要があるからそのマーケットが存在しているのだ。
ここで美術にも大きく2つのマーケットが存在する。このことは一見、美術=純粋なものと考えがちなアート市場を改めて考え直させるものだ。
まず一つ目の市場は国や企業が運営している美術館やメガギャラリー達が運営する美術市場だ。
このような市場に出品され売買される作品は美術手帖(美術のトレンドを紹介する本)や
各種有名美術雑誌に取り上げられ、時代を先駆けるアーティストとしてとりあげられる。
この市場で取引される作品の多くは高額で取引される。これは作家がトレンドを作っているとみるかもしれないが実は、逆である。
美術館やメガギャラリー達が自分のコンセプとに一致する作家を発掘し、投資し、一流スターとして育てているのだ。
これをよく説明している本に「巨大化する現代美術マーケット」(ダニエル・グラネ著)というのがある。
これはいかにメガギャラリーが作家を発掘し投資しているかをよく説明してくれている。
Kーpopを見てもらいたい。あそこに出てくる歌手は可愛かったり、カッコよかったりするが
資本金のあるプロダクションが自らの会社を運営するためにこいつは使えるな、
と思った歌手に投資して育て、一流にしているでのある。
つまり自分たちのコンセプトに合わない人材には投資しないのである。
美術においても同じだ。自分たちが育てたい作家を発掘して投資し、
作品を買ったり、アートレジデンスを提供したりするのだ。
ようはお金を持っている側が自分たちのトレンドを作り上げているのだ。
Korean ドラマは俳優がシナリオを決めるのではなく有名な脚本家がいくつものドラマのシナリオを決めている。
ギャラリーもギャラリーを運営するオーナーが「俺は海の絵を沢山展示・販売するギャラリーを作るつもりなんだ」と言えばそのようなギャラリーになるのである。
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また資本金が多いギャラリーや美術館は雑誌社と連帯している。
美術手帖のような有名な雑誌に特集でとり挙げられるアーティストはだいたい
メガギャラリーが目をつけたアーティスト達だ。
つまり、この市場でのし上がるには自分の好きな作品やコンセプトをベースに作品を作るのではなく、彼らが気にいるような作品を作ることが必要になってくるのだ。
このマーケットでは作品は高額で取引される。そして多くのアーティストは高額で
取引されるその市場に乗っかりたいと思う。そして多くの人はどこどこの有名なギャラリーで
展示をしたとか、美術館で展示をしたと聞くと、あたかも物凄い逸材のように崇めていく。
この場合、作品が本当に良くてレベルが高く賞賛する場合もあるし、作品の内容ではなく彼らが作り上げたトレンド自体を称賛し崇める場合も多いのである。
K-POPを見て欲しい。現在魅力を感じるK-POP アーティストは何人いるだろうか?
おそらくいると思う。
しかし同じような数十ものアーティストが存在し、同じような歌詞を歌い、同じように踊り、
そして生き残るのは一握りだ。だいたい似ていて誰が誰かわからない。
プロダクションのコンセプトに合わせないといけないからだ。
私は韓国にいるときに韓国人の友人とこの話をしたが多くの韓国人は私と同じように考えていた。
「K-POPは最近同じようにしか見えない。ドラマや映画はサランヘヨしか言わない。いつも同じだ。愛しか伝えない。それは良いドラマや映画だとは思わない。」
少し話はずれたがK-POPでいうとトレンドを作り出しているのはアーティストの側ではないという話だ。
現代の美術の2つの市場②ー市民の市場
もう一つの市場は一般的なギャラリーやアートフェアや個人取引を中心とした美術市場だ。
莫大な資本金がバックにないにしても利益を算出するために、
もしくは美術が好きで、美術愛好家(コレクター)や企業、市民を対象にして
彼らが求める作品を提供して利益を得ようとする市場である。
この市場で中心になるのは大中小企業や個人、またはアーティストであり、
お互いがウィン、ウィンの関係になることが多い。
(ここでいう企業というのは会社イメージアップのためにロビーに絵を飾るために購入したり、商業目的や投資のために作品を購入する企業のことだ。)
なぜかというとギャラリーは企業や個人の求める作品を提供しなければ売れないし、利益が出ない。
また企業や個人が欲しがる作品の多くは美しい作品やカッコイイ作品だ。
もしくは企業のイメージにあった作品である(例えば観光業なら風景画、IT関係なら抽象画など)。
彼らにとって絵を購入するのは企業ののイメージアップのためである。
もちろん余裕がある企業は投資目的のために少し高くても成長率のある作家の絵画を買ったりするだろう。
そしてアートフェアなどで多く売れる作品の大部分はカッコイイか綺麗な作品である。
アートフェアには個人、カップル、親子連れ、コレクター、企業のCEOなど色んな人が見にくる。
哲学的すぎる作品やドロドロした作品は超有名でプロモーションされてない限り
出品してもほとんど売れることはない。
個人や新婚では家にかけたくなる作品であることは言うまでもない。
ポイントはこの市場においてはアーティストがトレンドを作りだすことができる。
なぜかというと企業や個人はどういう絵が欲しいのか具体的にイメージがつかない場合が
多いからである。アートに付いてあまり知らないからである。
「誰か良い作家が良い作品を作ってくれたら買おう!」
「そうそう私が欲しかったのこれなんだょ〜〜!」というスタンスだ。
自らがアートのトレンドを作り出すために買おう!とは思っていない。これが①との大きな違いである。
ここにおいてトレンドを自由に作りだすのは美術作家になるが、
作家はこの市場で売るにもある程相手のニーズを把握することは必須である。
こちらの市場の方が本来の自由市場に近いと言えるだろう。
また金持ちのみが買える絵ではなく適当な価格で買える絵も多いため
取引の頻度は①の市場よりも活発になる。
絵が売れないと作家として力を失うーライバルの必要性ー
私の知り合いで精力的に創作活動をしている作家は皆、絵がよく売れるか、
時々でも売れて定期的に収入を得ている作家である。
彼らは余裕と制作時間ができ、もっと精力的に創作に投資しようとする。
絵は描く時間はまだ見ぬ未来を見つめた投資の時間だ。
しかし、、、、、
「いや、いや、、絵が売れなくても俺は純粋に絵を愛していて
そんなことに関係なく創作活動を続けられぜっ!」と思うかもしれない。
はい、そう人も稀にいるのも事実だ。
しかし、ほとんどの作家は絵が売れないので資金確保ができず
絵を描くこと自体に失墜するのを見てきた。
私は大学時代、油絵科に在籍していたのだが油絵科だけで一学年に150人の学生がいた。
そのうち何人が今も作家活動をしているだろうか?推測して頂きたい。
答えは、、、、、、
それは私も含めて10人くらいだ。
つまり残りの140人はほとんど絵を描くことをやめてしまったのだ。
絵が売れないのにどうして絵をかく余裕があるだろうか??
彼らは企業に就職したり、先生になったり、他に収入を得れる道を選んだ。
他の仕事(美術教師など)があり収入が別にある傍らで制作を続ける人も結構いるが、、。
作家は皆、絵が売れないと貴重な時間を投資して展示を開いたり作品を作ったりする気力がなくなってしまうのである。
また絵が売れる売れないに関わらずモチベーションを維持するのに重要なことがある。
それは自分が美術市場に進出している実感だ。
もちろん美術市場に進出するほど絵はよく売れる。
精力的に制作をしている作家に共通することはこのマーケットに積極的に参加しているという事実だ。
マーケットにはライバルも味方もいて相互関係的だ。
ライバルは自分に刺激を与えてくれるし、一緒に絵を売るためのギャラリストや協力者に出会えたりする
「俺は一人で描きたいものを描く!」という画家もいても良いと思うが、
アートフェアや展示を通して人や社会と関わり自分の立ち位置を把握することは
自らの制作にインスピレーションを与えてくれるはずだ。
私は少し柔術をかじったことがあるのだが
柔術は相手がいないと練習ができない。相手がいないと自分がいかに弱いか、
技術がないということを悟ることができない。
自分よりも強い相手が自分を謙虚にしてくれて、成長させてくれるのだ。
そして今はまだ弱くてもお互い励まし合うことができる。
美術市場も同じだと思う。
仲間が自分の作品にコメントをくれる。ギャラリーがコメントをくれる。
人気がある作家と私の作品とを比較できる。
「なぜあの作家はあんなに絵が売れて人気があるのだろうか??
絵を描く人はプライドが高いのは知っているが、謙虚さは同時に自分を成長させてくれる。
ライバルには感謝である。
今も精力的に活動を続けている作家がモチベーションを保てると同時に
作品の販売が円滑になる理由が少しお分かりになったのではないだろうか?
今日は美術とは何か、アート市場を例にとって違う角度から考えてみた。
ではまた次回お会いしたい。
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